塞がらない穴
長男が亡くなってから心に開いてしまった穴。
大きく深くぽっかり開いた穴。
亡くなってから9ヶ月、この穴を塞ごうと必死に生きてきたような気がします。
でも無理でした。
穴は深く大きく何度も飲み込まれそうになりました。
いつか塞がる時が来るのだろうか。
そう思った時に偶然見つけて読んだのが
風見しんごさんの「さくらのとんねる」でした。
風見しんごさんの10歳の娘 えみるちゃんが交通事故で亡くなったのはあまりに有名な話です。
去年、たまたま見た番組の中で風見しんごさんが、「生きていればえみるは今年20歳になっていた。一緒に酒が飲みたかった」
そうしみじみと語っていました。
著書「さくらのとんねる」の中には娘さんを亡くされた後の9年間に起こった様々な出来事について書かれています。
娘さんを亡くされて一周忌が過ぎて数ヶ月経った頃、奥さんの妊娠が判明します。
ところが、染色体検査でお腹の子がダウン症と分かります。
それでも風見さん一家はお腹の子を受け入れる決心し、迎える準備をします。
が、8カ月の時にお腹の中で死亡…
更にはお父さんの認知症と介護、そして死。
娘さんが可愛がっていたペットの犬の死。
様々な問題にぶつかりながらも、えみるちゃんがきっと応援してくれていると信じ、大切な娘を喪ったからこそ分かる命の重みや人との繋がりを感じ、これらの様々な問題を家族で乗り越えます。
風見さんは著書の中で何度も子供を亡くした穴は一生塞がることはないと繰り返してます。
そして、その上でこのように語られています。
「悲しみは消えないし、我が子を亡くした穴が塞がることは決してない。
越えようとして、もがいてもがいて、それでも越えられないと、悲しみは、もっと辛いものに変わる気がする。
越えられないと覚悟したとき、逆に前向きになれるということもあると思う。
越えて消し去ろうとするから無理がある。
周りからは「いつまでも引きずってー」と言われるかもしれないけど、一生、それも自分の一部として悲しみとともに生きていくという選択があっても僕は良いと思う。」
更に
「悲しみに遭ったとき、傷が癒えたら、心に開いてしまった穴が塞がったら、そうすればまた頑張れるだろうと、おそらく誰もがそう思うだろう。
だけど、いつまで経っても傷は癒えないし穴は塞がらない。
〈あ、これはもう一生塞がらないんだ…〉
ということに気づくまで、僕は、本当に長い時間がかかった。
中略
一生穴が開いたままなんだというのは、絶望と同じではない。
穴が開いたままでも、そこから新たな芽を出すことだってできる。
それがわかれば、次の一歩を踏み出せる。
その傷が消えることを期待していたら先には進めない。」
事故と自殺。
状況は違いますが、突然我が子を亡くした穴は同じです。
この本が出版されたのは昨年。
風見さんが、こう思えるようになるまでには9年の歳月を要したようです。
そしてえみるはいつも一緒にいる。
色々なメッセージを僕達家族にくれるとも書いています。
もしかしたら…
お墓参りの帰りに見た虹。
お墓の側で見る蝶。
長男の夢。
私も長男からメッセージをもらっているのかもしれません。
そして、穴が開いたままでも生きて行って欲しい。
長男がこの本を通して私にメッセージをくれたのかもしれません。
まだまだ開いた穴は大きくて苦しくて辛い毎日です。
でも、いつかこの穴と共に生きていこうと決心できたら、私の半分止まっている時間が動き出すのかもしれません。
最後に風見さんの歌う「ゆるら」。
亡くなったえみるちゃんに優しく語りかけるように歌ってます。
聴くと泣いてしまいますが、好きな曲です。
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