ひこうき雲

2016年3月に大学生の長男を自死で亡くしました。
長男への気持ちなどを綴っています。

運が悪かった?

辛くて辛くて仕方ない時に

横にいた次男に愚痴を漏らしたことがあった。


「何で、うちはこんな目に合うわけ?何もない人は何も無く幸せな人生を送れるのに、何でうちはこんなに辛くて悲しい思いをしなきゃならないの?不公平じゃない?」

と、最後は語気を荒げて次男に吐き出した。


すると次男から帰ってきた答えが

「うちは運が悪いだけだったんじゃないかな」

だった。


「運が悪いだけでこんな苦しむの?そんなのおかしいじゃない!」


思わず反論すると


「だってさ、どこの家庭に生まれるとかそういうのってさ、親を選んで生まれてくるとか言われてるけどそんなの本当かどうか俺達にはわからないじゃん?だったら運としかいいようがないじゃん。

同じもの食べて同じように生活してたって、癌になる人はなるし、ならない人はならない。事件や事故だって遭う人は遭うし遭わない人は遭わない。例え同じ事故に遭ったって死んじゃう人は死んじゃうし、生き残る人は生き残るじゃん。前世の行いとか悪い事をしたからって言う人もいるけど、やっぱり俺たちにはそれが本当かどうかわからない。だったら、運だったっていうしかないじゃん。宝くじに当たるのが運なら、その家庭に起こる悲しい事も運じゃないのかな」


「………」


運が悪かっただけで長男の死を割り切るのは無理である。

でも、次男の言葉は変な励ましや理屈を越えて、すっと胸に入ってきた。


もし、何かの罰なら、世の中もっと悪いことしてる人間はいっぱいいる。

そんな奴らを差し置いて、私達家族がこんな思いをするのは確かに納得いかない。


じゃあ、前世の行いやら先祖の行いの結果なの?

そんなのは私にはわからないし、やっぱりそう言われても納得いかない。


ならば私達家族は運が悪かっただけなのか。

でも、運が悪かっただけにしては喪ったものはあまりに大きい…


ただ、次男の言葉を聞いてただただ悲しいと嘆いている私よりも次男はもっとしっかりした目で兄の自殺を捉えてるのかもしれないと感じた。


次男が最後にポツリと言った。


「俺は子供を喪ったお母さん達の気持ちはわからないし、たまたま運が悪かっただけかもしれない。でも、自殺してまで兄ちゃんが伝えたかったことが絶対あるんだと思う。家族がそれにきちんと気づかなきゃ、兄ちゃんの死は無駄死になるんじゃないかな」